2024年の韓国映画、ベクデル・テストの成績は?|Korean Film Council announces last year’s ‘Bechdel Choice 16’
興行ランクTOP30のうち60%がべクデル・テスト合格
みなさま、こんにちは。
突然ですが、「べクデル・テスト」という言葉をご存じでしょうか?
「ベクデル・テスト」とは、映画における「性平等指数」、ジェンダーバイアスを測るために用いられるテストのことです。
米国の漫画家アリソン・ベクデルさんが1985年に自身の漫画“Dykes to Watch Out For(警戒すべき同性愛者たち)”の中で「この基準をパスしたものしか見ない」と言及したところから由来し、「ベクデル・テスト」と名付けられています。
それによると、指標はたったの3つ。
- 名前のある女性の登場人物が2人以上登場するか。
- 名前のある女性の登場人物同士の会話があるか。
- 彼女たちの会話の内容に、男性に関わらない内容のものがあるか。
韓国では2017年から映画振興委員会(Kofic)が「ベクデル・テスト」の統計を定期的に発表しており、2024年の報告書は3月7日に出されました。(「2024年韓国映画ジェンダー決算報告書」)。
つまり、女性が独立に描かれているかを測る指標ということですね。
分析対象は2024年に劇場公開された韓国映画とOTTのオリジナル映画182編。これは、実際に公開された222編のうち、ライブの実況とドキュメンタリー映画の計40編を除外したものです。
182編の分析対象映画の中には、製作費30億ウォン以上の商業映画37編で、OTTオリジナル映画が6編含まれています。
中でも注目したいのがヒット作ですが、興行ランキング上位30位の中からアニメとドキュメンタリーを除いた27編を分析したところ、「ベクデル・テスト」を通過した作品は16編で、59.3%。
統計を定期的に発表し始めた2017年は34.5%、2018年は36.7%、2019年43.3%、2020年53.6%と「ベクデル・テスト」通過率が毎年上がる趨勢だったのですが、コロナ禍の2021年には39.3%、2022年には35.7%と一気に下落。映画産業が委縮し、映画館に足を運ぶことすらままならない状況だったため、観客を呼べるブロックバスター、男性を主役にした派手なアクション映画が中心だったことが見て取れます。
2023年には41.4%とまた上向きになり、2024年の59.3%はこれまでの最高記録となりました。
「ベクデル・テスト」を通過した作品は?
では、どのような作品が「ベクデル・テスト」を通過したのか見てみましょう。
まずは観客動員数1,191万人を記録し、2024年興行成績1位となった『破墓/パミョ』。

次は、『パイロット』

『市民捜査官ドッキ』

『宇宙+人』Part2

『#彼女が死んだ』

『ヒドゥンフェイス』

『聴説(Hear Me : Our Summer)』

『プロジェクト・サイレンス』

『満ち足りた家族』

『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』

『プロット 殺人設計者』

『ビクトリー』

『SPRING GARDEN』

『DOG DAYS 君といつまでも』

『ピクニック』

『1勝』

「ベクデル・テスト」をパスした16作品のうち、半数の『破墓/パミョ』、『市民捜査官ドッキ』、『#彼女が死んだ』、『プロジェクト・サイレンス』、『満ち足りた家族』、『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』、『プロット 殺人設計者』、『DOG DAYS 君といつまでも』は日本でも公開済みだったり、公開が決まっています。
韓国映画振興委員会では、「ベクデル・テスト」の合格率が増えたことについて、「主役・助演の女性キャラクターの割合が数的に増えたことを示唆する」とする一方、数字に留まらず、その中身についても「女性ステレオタイプテスト」で踏み込んで分析しています。
「女性ステレオタイプテスト」の結果は?
興行成績上位27編のうち、6割にあたる16作品が「ベクデル・テスト」をパスしましたが、「女性ステレオタイプテスト」ではどうなのか。
報告書はさらに踏み込んでいました、女性たちはどんなふうに登場するのか。
「女性ステレオタイプテスト」は質問項目が7つあり、一つでも当てはまれば「ステレオタイプ化された女性キャラクターが存在する」とみなされます。
その項目は、以下のとおり。
①女性が男性からの救出または救援に全面的に頼っているか?
②女性の行動や決断が説得力なく紹介され、男性を窮地に陥れるか?
③女性がほぼ男性だけで構成された集団にアリバイ的に、或いはアクセントとして機能しているか?
④誰かの世話をすることが、説得力のある物語がないまま女性の当然の義務や本性として与えられているか?
⑤女性が単に異性愛ロマンスの対象としてのみ機能しているか?
⑥過度に性愛化された、刺激のためだけに利用される女性が存在するか?
⑦自分の物語がないまま(犯罪などの)被害者としてのみ展示される女性が存在するか?
①から⑤までは主演・助演を対象にした質問で、⑥と⑦は全ての女性キャラクターを対象にしています。
質問項目を読んでいると、これはいかにも当てはまるものが多そうな気がしませんか?
こちらのほうは、27編のうち12編(44.4%)が該当ありと判断されました。うち、③の項目に該当すると判断された作品は、『犯罪都市4』、『ベテラン2』、『消防官』、『ハルビン』、『脱走』、『コメント部隊』、『幸福の国』、『アマゾンの弓名手』と最も多く、その数8編。この項目は3連続で該当数が最も多いのですが、2022年と2023年は9作品だったので、わずかながら改善が認められます。
一方、「ベクデル・テスト」を無事通過したものの、「女性ステレオタイプテスト」に引っかかってしまった作品も。
『ヒドゥン・フェイス』は⑥に、『DOG DAYS 君といつまでも』は④に該当すると判断されました。
ちょっと納得。
映画の内容的に、いかにも引っかかりそうだと頷いてしまいました。
「ベクデル・テスト」をパスした作品と、「女性ステレオタイプテスト」に該当する作品が同時に高い割合で現れたことについて、映画振興委員会の報告書は「女性キャラクターが量的に増加したものの、依然『アリバイ的』な登場であり、表面的な傾向が続いている」とし、「今後もう一歩踏み込んで、女性キャラクターの質的な深みと独創性について考える必要があることを示唆している」と書いています。
こういう基準を知ってしまうと、観客の目のつけどころも変わってきそうです。
「あれ、この監督は女性をただアリバイ的に登場させただけだな」とか、「この監督はベクデル・テストを通過できないな」などと、女性が映し出されるたびに評論家のように映画を観てしまいそうな気が、しなくもありませんが・・・・・・。
ええ、見る目が養われるということで。(笑)
中規模予算映画での女性監督の活躍
「ベクデル・テスト」を通過した映画が増える一方で、女性キャラクターの描き方についてはまだステレオタイプから抜け出せていないという課題も見える韓国映画界ですが、実はこの報告書が冒頭で取り上げているのは、明るい兆し。
純製作費が30億ウォン以上の商業映画37編を分析したところ、女性監督の活躍に目覚ましいものがありました。
前年の2023年は『極限境界線 救出までの18日間』たった1編しかなかったのですが、2024年は『パイロット』、『市民捜査官ドッキ』、『#彼女が死んだ』、『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』、『ユミの細胞たち ザ・ムービー』の5作品(13.5%)と一気に増加。しかもこれら5編の女性監督による作品は、すべて興行ランキング30位以内に入っています。


女性監督の比率が一気に増えた30億ウォン以上の商業映画37編を分析したところ、女性制作者は29名(30.2%。前年23.9%)、女性脚本家は20名(32.3%。前年21.8%)と増えており、プロデューサー(13名、23.6%)と主演(9名、24.3%)は前年と同水準でした。
一方、商業映画とOTT映画のうち、女性の撮影監督が3年連続で一人もいない点などは、改めて聞くと驚かされます。
それだけ体力的にも女性が選びずらい厳しい職種ということでしょうか。
韓国映画撮影監督組合(CGK)のウェブサイトを見ると、現在108名の撮影監督が所属していますが、女性の撮影監督のお名前は4名のみ。
課題は色々ありますが、それでも男女比の偏りが改善傾向にあることが見えてきているので、2024年度の女性監督たちの活躍を受け、2025年度も商業映画における女性監督の活躍が続くことを是非期待したいです。
白香夏(ペク・ヒャンハ)
韓国語翻訳家。
主な著書および翻訳書に『ケバケ食堂 フォトブック』日本語版(白香夏 著)、『ケバケ食堂 フォトブック』韓国語版(白香夏 著)、『ワンドゥギ』(金呂玲 原著/コリーヌファクトリーLLC刊)、『ソ・ジソブの道』(ソ・ジソブ 原著/竹書房)、『幸せな通勤』(ポンニュン 原著/佼成出版社)、『中国が北朝鮮を呑みこむ日』(金辰明 原著/ダイヤモンド社)、『あこがれのあの人にハングルでファンレターを書こう!』(白香夏 著/学習研究社)、『イージーハングル3』(ユンソナ 著/白香夏 監修/学習研究社)、『一枝梅公式ガイドブック』(白香夏 監修/TOKIMEKIパブリッシング)他。
白香夏のブログ
ペクヒャンハ・ドットコム(https://paekhyangha.com/)


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